違う秤でものを量ろうとしているようなものだ

読了。金春屋ゴメス (新潮文庫)/西條奈加

日本ファンタジーノベル大賞受賞作。

一風変わった、いわば「ジャンル・ファンタジー」の正統というか正調というかを期待すると肩すかしをくらう賞なのだが、ファンタジーという概念を捻った上で、読み応えのある作品に出会えることは期待していいだろう。本作もその期待にはそむかない、と思う。

おもしろくて、中盤からはぐいぐいと読んでしまった。

まったく前知識なしに読みはじめたのだが、舞台は過去のような未来のような、不可思議な独立(一応)国家、江戸である。主人公は、わけあって江戸に入国し、その不思議な世界を体験することになる。

話は、時代劇から抜け出て来たような江戸らしさと、現代日本人の感覚・知識とが衝突し、揺らぐ。激しい相克、といった感じよりは、あくまで「揺らぐ」と形容したいような、ふるえ、ぶれ、迷い、その芯に通る想い——そういったものが、そこにはあって、それがおもしろい。

もちろん、物語を支えるのは不思議な江戸という舞台、そしてそこに暮らす人々である。表題にも名を出しているゴメスの異形というか、異様というか、凄まじさもまた、この物語の大いなる魅力であることに異論はないが、ひとりひとりが重たい人生を背負っていて、そこがよいのだ。

物語自体の流れも、淀みなく、何段落としかの小滝が設置されている感じで、飽きさせず、どんどん下流へと運ばれていく小気味よさがあり、いい読書をさせてもらった、と思った。

「わかってる。おまえの言いたいことも、お利保さんの思いも、辰つぁんもおれもわかってるんだ。目線の違いというか、違う秤でものを量ろうとしているようなものだ」

(p.118)

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