ぼくだってしょっちゅう悩んでるよ

読了:天球儀とイングランドの魔法使い (創元推理文庫)/マリー・ルツコスキ

ボヘミアの不思議キャビネット (創元推理文庫)の続編にあたる。〈クロノス・クロニクル〉の第二巻。

魔法の力が当たり前に存在するというだけで、我々の知る歴史と流れをほぼ同じくする世界が舞台。前作では、残酷な王子にボヘミア宮廷に連れ去られた父を救うため、少女ペトラが単身宮殿に乗り込んだ。今回は、その王子の報復の手から逃れようとして、まったく信用していないイングランドのスパイ、ジョン・ディーに救われてロンドンに行くことになる。

このシリーズ、とてもおもしろいのだが、直情径行型で、自分の直感にしがみついて絶対に他人のいうことなどきかない少女ペトラに、こう……たまに「落ち着け。人のいうこと聞け!」と説教をしたくなってしまうのが困るところ。そりゃもう作中でも説教されまくりだが、もちろん聞かない。つまり、いうだけ無駄。

彼女の頑固さが許せるような度量の広さがほしいなぁ、と思う。

ペトラが毛嫌いしているジョン・ディーも好きなキャラクターなのだが、このシリーズの魅力はなんといってもブリキの蜘蛛アストロフィル。本を読むのが大好きで理屈っぽくて冷静で、そしてペトラのためならなんでもしようと心に決めている。大好きな本を読むために頁を持ち上げる力さえなく、ペトラに「早く頁をめくって!」とたのむほど無力なのに、ときにはこの頑固な少女を説得して、意に染まぬ言葉を口にさせるほどの力がある。

アストロフィルだけで、ご飯三杯はいける。いや無理ですが。どっちだ。

まぁそれはともかく、物語には一旦区切りがついたとはいえ、つづきへ向かうような終わりかただったので、続刊が楽しみ。

「ぼくだってしょっちゅう悩んでるよ。だけど、それが感情とどうつながるのかがよくわからなくて。ぼくが本を読むのは、そんなときにどうしたらいいのかを学ぶためでもあるんだ。そして人は愛情ゆえに口をつぐんでいることもあるんだって学んだ。まったく同じ理由で、ときには大切な人と悩みをわかちあうってこともね」

(p.241)


不謹慎だけど、少しだけ嬉しいんだ

読了:憑き物おとします (幻狼ファンタジアノベルス)/佐々木禎子

最近、この著者の本を読むと、いつも考えてしまう。ゆるやかな全肯定。どんな存在であっても、なにをやっても、大丈夫なんだ、といわれている気がする。絶妙の距離感で、見守られているように感じる。

物語の舞台は、幽霊が一般人にも見えるようになり、完全に常識化した世界。霊障専門の保険を扱う保険屋に、実家を飛び出してなんでも屋をやっている主人公が巻き込まれ……という流れ。ホラーの枠組みに属すると思うが、スプラッタ系ではないので、そういった描写が苦手な人でも問題なく読めると思う。

そしてやはり、ホラーだなんだというよりもまず、ジャンル:佐々木禎子だなぁ、と思ってしまう。いつものように、すごく見守られている感じがする。いいんだよ、と肯定される気分になれる。

とぼけた味わいの登場人物と、強気の女性が出てくるのも特徴だと思うのだが、今回はやはり「癒し系死神」の存在が光るかな。街を歩けば「V系ロックバンドの人?」と勘違いされる超絶美形なのだが、なにしろ人間界を生きる上での常識がなく、見た目は美形、中身は幼児というギャップに癒される。主人公の壱也ならずとも、お母さんモードになって面倒をみてしまいそうだ。

自分もものをつくる人間としてはやっぱり、このへんの台詞に共感してしまうかな。

「ああ。待ってるわ。——あのさ、こういうこと言うと誤解されそうでなんだけど……俺らの音楽が未練になるなんて……不謹慎だけど、少しだけ嬉しいんだ」

(p.68)


Hello, WordPress!

サイトに設置していた wiki やブログを誤って消してしまいまして、暫くそのままでいたのですが、やはりなにか長文も書けるスペースがあった方が便利かな、と。

こちらのスペースでしばらく運用してみることにします。