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不謹慎だけど、少しだけ嬉しいんだ

読了:憑き物おとします (幻狼ファンタジアノベルス)/佐々木禎子

最近、この著者の本を読むと、いつも考えてしまう。ゆるやかな全肯定。どんな存在であっても、なにをやっても、大丈夫なんだ、といわれている気がする。絶妙の距離感で、見守られているように感じる。

物語の舞台は、幽霊が一般人にも見えるようになり、完全に常識化した世界。霊障専門の保険を扱う保険屋に、実家を飛び出してなんでも屋をやっている主人公が巻き込まれ……という流れ。ホラーの枠組みに属すると思うが、スプラッタ系ではないので、そういった描写が苦手な人でも問題なく読めると思う。

そしてやはり、ホラーだなんだというよりもまず、ジャンル:佐々木禎子だなぁ、と思ってしまう。いつものように、すごく見守られている感じがする。いいんだよ、と肯定される気分になれる。

とぼけた味わいの登場人物と、強気の女性が出てくるのも特徴だと思うのだが、今回はやはり「癒し系死神」の存在が光るかな。街を歩けば「V系ロックバンドの人?」と勘違いされる超絶美形なのだが、なにしろ人間界を生きる上での常識がなく、見た目は美形、中身は幼児というギャップに癒される。主人公の壱也ならずとも、お母さんモードになって面倒をみてしまいそうだ。

自分もものをつくる人間としてはやっぱり、このへんの台詞に共感してしまうかな。

「ああ。待ってるわ。——あのさ、こういうこと言うと誤解されそうでなんだけど……俺らの音楽が未練になるなんて……不謹慎だけど、少しだけ嬉しいんだ」

(p.68)

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