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悩むってことは向上する余地があるってことなんだから

読了:ルナティック ガーデン/太田忠司

月への往還は容易になっている、しかしそこへの定住はまだまだ珍しい、少し未来を舞台にしたSFミステリ。

これは感想を書くのが難しい……ミステリは往々にして最後の種明かしが物語の核心となっていて、そこが気に入ったとかどうだったとかいうのが、強く抱く感想になってしまうから、いつも難しいのだけれど。

ネタバレにならない範囲で言及すると、あとがきにある著者の言葉を見てまず思いだしたのが、自分自身がネットで知恵を借りながら「SF」を書こうとしたときの経験だった。科学考証的には、さほど破綻なくまとまった小説は書くことができて、それはひとえに「知恵貸し」に参加してくださった皆さんのおかげだったのだが、ではその小説はSFかというと……なんか、SFって感じしないな〜、と、自分では思ったのだった。

それに比べると、この作品はきちんと「SF」であると思う。つまり、ネタバレであるから言及しづらいなと思う、その話の核の部分が、そのジャンルでなければ書けないテーマと繋がっている、ということなのだ。……この程度なら大丈夫かな。

月面での本格的な庭作りについてのディテールがおもしろかったので、その方向で詰めていく作品もまた読んでみたい。

個人的には、楊さんが好み……誰も欲しがらない情報で、すみません。

「庭作りでは一生、その立ち位置に悩むことになるわ。自分がやっていることは正しいのかどうか、造り上げた庭は本当に正しいものなのかどうか、ずっと悩みながら仕事をすることになるでしょう。それでいいのよ。悩むってことは向上する余地があるってことなんだから」
そう言って微笑んだときのアデルの表情は、とても柔らかだった。エチカは訊いた。
「あなたも、今でも悩んでるんですか」
「おかげさまでね。まだわたしも成長できそうよ」

(p.179-180)